伊豆高原は富士箱根伊豆国立公園に指定された、天城の山々、大室山、城ヶ崎海岸という豊かな自然に恵まれたリゾート地。観光やアウトドアを楽しむのも良いところであるけれど、その豊かな自然に耳を傾ける旅はどうだろう。
あえて何もしない贅沢な時間を過ごす。
その宿に泊まり、滞在することが旅の目的。滞在する時間を贅沢に過ごせるのは、豊かな自然に囲まれた自由でこの上ない寛ぎ。5,000坪の森ではプライベートな空間を堪能し、混雑することもない。森の中と言っても部屋は洗練された客室で部屋ごとの設えも、それぞれの個性が魅力的だ。
花吹雪の森の中心部に位置する「白翁棟」は緑の中に包まれるようにある。
能の演目「翁」で演じられる「白翁」をイメージして設えたお部屋。広く開講した窓からは幾重にも重なる緑が見え、深い森へ続いている。自然の緑を見つめていると自分自身もまるで森の中に溶け込んでその一部となっているような錯覚になってくる。神聖な舞である「翁」の雰囲気がするような景色。
畳にごろっとなるなんてことも、最近はしなくなって久しい。
天井と壁に和紙、畳、森を通して降り注ぐ外光と室内の間接照明。閑静な時間が流れていく。文庫を1冊持ってきたのだが、いつの間にかうとうとと眠り込んでしまう。うたた寝とはなんとも気持ちの良いもの。
歌が上手になった鶯が藪の中から鳴いている。力強く、高い声で鳴く時は、求愛の歌を雌に告げる雄の成鳥だそう。自慢げに美声を森に響かせている。
うたた寝から目覚めたら、湯殿に行こう。何しろ5,000坪の森の中に客室はわずか20室。貸切の温泉が9つという贅沢さ。白翁棟からは、露天風呂と内風呂がある黒文字の湯、檜湯、そして露天の鄙の湯も近い。
四季の移り変わりを堪能し、森の匂いを嗅ぎながら敷地内をゆっくり散歩。あえて予定は決めずに、点在する貸切の湯殿を巡るもよし、行き来の小径に足を止めるもまた良し。
和風オーベルジュと呼ばれる花吹雪。深い森に包まれ、宿泊棟が点在する。食事処も料理茶屋が3箇所に点在。他のお客様を気にせずゆっくりと食事が楽しめる。今夜の夕餉も楽しみである。