暑くて長い夏。秋風がそよぐ頃となったこの頃、心身ともに癒されたいと思う。 伊豆高原は朝夕の気温が下がり、ミンミン蝉がツクツクホウシに変わったという。 秋の訪れだ。天然掛け流しの温泉に浸かり、美味しい秋の味覚を楽しみ、この夏を乗り切った自分を労ってみたい。
先付けは鮑とオクラの水晶寄せ
街中の日中は体温くらいまでになる日もあって、口当たりの良く、ツルッと冷たい一品にホッとする。まだまだ冷酒や泡で食事を始める。
季節が移ろう様を盛り込んだ八寸。毬栗に見立てた一品を添えて秋を先取り。
炙り酢〆かますの棒寿司、胡麻麩と柿の胡麻酢和え、ほやと菊花の酢の物すだち釜盛り、静岡鶏の松風赤味噌仕立て、いが栗クリームチーズ、いちょう丸十
お造りは地魚三種盛り
金目鯛の焼霜造り、独特の甘みがあり夏場はあっさりと頂ける。
鰆はトマトのジュレでサッパリ、白身は尾長鯛
煮物:海老真薯の銀餡掛け
上品に揚げてふわふわとした舌触りの中にぷりぷりした海老の身。
上品に揚げ、コクと香り、光沢のある繊細な味わいの銀餡が絡んだ海の主菜
中猪口はネクタリンと天城山葵のソルベ
焼き物:契約農家直送の丸茄子と平茸の素味噌焼き
とろっとした丸茄子。香ばしくも甘みのある素味噌が絡んだ充分力のある一品
総料理長が小布施(長野県)の契約農家を尋ねた話をしてくれた。
千曲川の流域で時々川が氾濫した地域。氾濫すると土壌が流れてくるので土は肥沃なところ。
小布施は「栗」の産地として知られていて、中世から栗の栽培が行われており、江戸時代には幕府に献上されるほど、盛んに栽培されました。しかし、この契約農家がある地域では「栗を育てるとバチが当たる」という言い伝えがあり、他の作物が作られてきた模様です。
なかなか伺えず、こちらからお話しする機会がなかったが今回やっとお話しできました。花吹雪の為だけに野菜を育ててくれていて、本当に愛情込めて丁寧に育ててくれている。野菜の種が美味しくて力がある。今日は丸茄子、オクラ、きゅうりなど。
先付けにオクラ、きゅうりは黒文字漬けにも使っています。
御飯、擦り流し、香の物
汁は、かぼちゃの擦り流し。ポタージュとはまた違うあっさりと頂けるかぼちゃの擦り流しは出しが効いた和風ポタージュ、否、とろみのついたお吸い物と言えよう。
かぼちゃの種を煎ってトッピング、香りと香ばしさが味を引き立てる。
最後に水菓子が出た今日の献立。満足感に浸りながら一品ずつ思い起こしてみる。契約農家さんを訪ねた話を伺いながら、一品ずつ味わった今夜の夕餉。
メインには魚も肉も使わずに、野菜中心に組み立てられた献立。それでいて充分に食べ応えがあり、こんなに深い満足感があるとは・・・。野菜のチカラとそれを引き出す料理人の腕とセンス感じた。