晩秋の伊豆高原、駿河湾の本海老と秋鰆で晩酌

冷たい空気が冬を運んでくる立冬。富士山の初冠雪は昨年より3日遅く、一昨年より5日遅いと言うから静岡県は立冬を過ぎてもまだまだ秋という感じだ。海を見下ろす伊豆高原は冬さえも暖かいので庭の茶梅が咲いたり、イルミネーションを見かけたりするとそろそろ季節は冬だなと思う。


味覚の秋は11月?

花吹雪の献立も11月に入るとぐっと深まる秋を感じる。その土地の季節を味わうのも旅の重要なポイントであり、楽しみでもある。花吹雪の秋の献立に舌鼓を打ちながら明日の予定を考えるとしよう。



先付:胡麻味噌焼き 伊東産あおり烏賊、雲子、丸十、蕪
なめらかな食感とこっくりとした海の香り。おすすめの日本酒と一緒に。



八寸:占地と星葡萄と松の実の白和え、酢〆かますの炙り棒寿司、静岡鶏の松風、むかご、いちょう丸十、伊豆沖でとれた本海老の老酒漬け、次もの白鯖ふぐの唐揚げ、獅子唐
脂が乗った秋かますを焼き霜造りにした棒寿司。皮の香ばしさと旨味が絶妙。
ふっくらと柔らかい地魚、白鯖ふぐの唐揚げ。日本一深い駿河湾の水深200m~400mの深海に生息するという「本海老」。甘味と旨味が口に広がる。



御造:金目の焼き霜造り、石垣鯛、平政
秋も深まると魚は身に脂が乗って来て、地魚はどれも美味しい。



蓋物:契約農家直送 里芋の揚げ饅頭、銀杏入り、鱶鰭の姿煮のせ、芽蕪、金時人参、松葉柚子
私が個人的に「名物」だと言っている、里芋の揚げ饅頭鱶鰭の姿煮のせ。楽しみな一皿。



中猪口:洋梨と天城山葵のソルベ
フルーツの甘さの後のピリッとした感覚と風味がなんとも言えない大人のソルベ。




焼物:秋鰆の自家製塩麹漬け 竹皮包み焼き、焼ききのこと柚子の太白胡麻油和え、干し無花果のラム酒煮
鰆は時の如く、春が旬かと思いきや秋からは2度目の旬を迎え「秋鰆」と呼ばれる。実は秋の方がふっくらとして美味しいのだとか。これから冬にかけては「寒鰆」と言い脂が乗ってさらに美味しいそう。



御飯:栗おこわ 留椀:百合根真薯の清汁仕立て 香の物:胡瓜の黒文字漬け、蕪の甘酢漬け、汐吹昆布
秋を感じる、栗おこわ。もちもちとした食感がいい。



料理屋菓子:林檎のコンポートとマスカット 林檎ゼリー掛け



明日の天気も良さそうなので、地元の人たちがよく遊びに行くと言う「小室山」へ行ってみることにしよう。


小室山リッジウォークMISORAと絶景カフェ321

15,000年前の火山の噴火時に溶岩のしぶきが降り積もってできた小室山。リフトで山頂まで登れる。標高は321mで大室山と違って徒歩でも登ることができる。およそ30分。



大室山に比べて小さいスコリア丘だが、海に近いだけあって、山頂からの360度の展望は絶景。



ボードウォークで山頂を一周できるようになっている。海に近いせいか、本当に素晴らしい景色で、海と空と自分自身が一体になった気持ちになれる。正面は相模灘、北には富士山が、南は房総半島、そして西は天城連山と360度見渡すことができる。眼下には、世界ゴルフ場100選に毎回選出される、名門、川奈ホテルのゴルフコースが見える。



2021年にオープンした「絶景カフェ321」は全席オーシャンビュー。カフェ利用者のためのプライベートウッドデッキでは海と空が広がる紺碧の世界へ。コーヒーもなかなか美味しい。



小室山へは伊東駅からバスで20分。だいたい1時間に2本が出ている。2023年の夏にレストランもリニューアルされて「KITCHEN218」となった。



麓の小室山公園には10万本のつつじが植えられており、花の名所となっている。4月には真っ赤なつつじが咲き誇り、それはそれは見事だというから是非訪れてみたい。



椿園もあり、1000種、4,000本が栽培されているそうでこれは見ごろが2月頃。
珍しい品種もあり、一輪挿しや生花での「つばき鑑賞会」も開催される。

暖かい伊豆は早咲きの河津桜や椿など冬の花見が楽しめる。

天然記念物・大室山と伊豆の瞳、一碧湖

伊豆高原に滞在中、ショートトリップで楽しめるスポットとして大室山は気持ちが良くておすすめである。「単成火山」の典型、鉢形のスコリア丘で山全体が国の天然記念物に指定されている。伊豆東部火山群では最も大きなスコリア丘で頂上からは東伊豆地方の海まで一望できる。約4000年前に噴火してマグマが噴き上げられて飛散冷却した岩塊や火山弾が火口の周りに降り積もりできた噴石の丘で、木が1本もない。



大室山の噴火によって大量の溶岩が流れ出し、伊豆高原や荒々しい岩壁を形成した城ヶ崎海岸ができたという。



天然記念物のため徒歩では登れない。ゆっくりリフトでしながら登り降りする。標高は580m。山頂にはすり鉢状の噴火口があり、遊歩道でぐるっと「お鉢巡り」ができる。山頂から眺める景色は素晴らしい。お天気さえよければ富士山、箱根山々、初島、大島、伊豆高原、天城山の尾根。360度の眺望である。






山全体がカヤ(ススキ)におおわれていて木がないのは、約700年前から茅葺き屋根に使う良質のカヤを採取するために定期的に山全体を焼き上げる「山焼き」が行われているからである。この豪快な伝統行事は今も続き、毎年2月ごろ伊豆に春を告げる観光行事として賑わう。




大室山を後にして伊東市内に向かって車で15分。日本百景にも選定された「伊豆の瞳」一碧湖。湖面が光り輝き、空もと一体になって輝いている様子からその名がついたのだとか。一碧湖1周4キロ1時間の湖畔散策ができる。 湖畔には与謝野鉄幹・晶子の歌碑が建つ。二人は一碧湖を愛し、近くの山荘によく訪れたという。




当市近郊でも十分に初秋を楽しむことができた。富士箱根伊豆国立公園内にある伊豆高原・花吹雪の「森の園」にも秋の気配がする。



森の園を上がって行くと大室山が見える。山頂から見た伊豆高原は青い海へ続く美しい森に見えた。こちらから大室山を眺めると木々の合間からちょこっと緑の頭を覗かせている。「おうい。さっきはありがとう」と言ってみる。


秋野菜、地魚も日に日に深みを増して行く。地酒で楽しみたい季節のお料理である。



先付 嶺岡豆腐 江戸時代からの伝承料理。もっちりとした弾力のあるクリーム豆腐と言った感じで、和食の先付として、甘味としても美味しい一品。






八寸 すずきの南蛮漬け、炙り煮穴子の棒寿司、秋野菜の黄身酢掛け、里芋、茗荷、オクラ、ずわい蟹と柿のなます



煮物:静岡鰻の飛竜頭、菊花餡掛け



焼物:静岡牛「葵」の朴葉焼き、水茄子、栗、粟麩、針葱 酒の肴によく合う朴葉焼きは香りも良い。もともとは飛騨地方の郷土料理だそう。



御飯・留椀・香の物



料理屋菓子 自家製和三盆わらび餅



深まる秋を感じる宵闇に三日月と虫の声。自然と調和しながらの掛け流し露天風呂。日常を忘れ葉越しの月見を楽しむひととき。


静岡県産アロマ精油でブレンド講座

日本のアロマセラピーは英国式が普及し、香りを嗅いでリラクゼーション効果を得ることが主な目的として愛用されている。好きな香りに包まれる芳香浴は心地よい。香りがもたらす効果は人の体やこころにとても大きな影響を持っていて、鼻の粘膜から大脳辺縁系に直接働きかけて、感情や、記憶とも連動しているという。花吹雪ではクロモジの香りをイメージとして演出している。


クロモジの精油は宿に隣接する森や天城で採れる天然木を使って、敷地内の蒸留所で抽出している。じっくりと時間をかけて植物の持つ成分、「パワー」を抽出する水蒸気蒸留法を採用。とても繊細な精油の抽出方法である。



花吹雪のクロモジ精油に魅せられた、天然香水調香師の杉浦元昭先生は、幾度となく訪れ、このクロモジ精油の持つ可能性について研究されているそう。今回、先生の企画で「静岡県産の精油を使って好みの香りをブレンドする」というとても魅力的な講座が開かれると聞いて参加した。



中心となる精油は、花吹雪のクロモジ精油ヤブニッケイ精油、東伊豆産のニューサマーオレンジ精油、天竜産のシナモン精油。いずれも静岡県産の希少な精油だという。



アロマセラピーの香りには樹木系、ハーブ系、フローラル系など7種類に分類され、その効果も分類ごとに特徴があり、花や葉、果皮、根、種子、樹皮などから抽出した天然成分を水蒸気蒸留法や圧搾法などで抽出する。



近年は代替治療としてのメディカルアロマセラピーは注目されている。フランスでは医師が医薬品として精油を処方することも一般的と聞く。日本では精油の持てる効能効果が傷病の治療に対してエビデンスが少ないため、現在では医療として認められていないが、研究が進められているようだ。精油が秘めた力は奥深い。


今回の講座で使用するクロモジとヤブニッケイは花吹雪で精製している。希少な和精油のブレンド講座と秋の昼膳。アロマ好きにはとても魅力的なイベントが行われた。


「希少な和精油のブレンド体験と花吹雪の昼御膳」静岡からはツアーが組まれ、さわやかツアーの大型バスで30名のお客様が愛称「みのりん」で親しまれている、小沼みのりアナウンサーと一緒に参加された。



希少な県内産の4精油に加え、ヒノキ、フランキンセンス、ユーカリ、レモンマートルの精油の中からブレンドし、最後に「クロモジの芳香蒸留水」で希釈。天然アロマスプレーを調合した。




水蒸気蒸留法は副産物として、フローラルウォーター(芳香蒸留水)が精油の抽出と同時に精製される。蒸留所を持つ花吹雪ならではの「クロモジの芳香蒸留水」これがまたマイルドな香りを放つ。植物からの素晴らしい贈り物だ。



柑橘系のフレッシュ感とスパイシーな木の香りが相まった素敵なマイアロマが誕生した。早速、マスクの裏にスプレーしてしばし目を閉じて香りに浸る。至福の時間であった。


晩秋の森の散策

市川社長ガイドの森の散策。ちょうど季節の花々が見頃。4000坪の敷地は森の中、良い空気を胸いっぱいに吸い込んで、リフレッシュしたい。





ホトトギス





磯菊



ノコンギク



石蕗



りんどう



青藤袴 



千両



今年も残すところ後1ヶ月と少し。秋の味覚と掛け流し温泉、そして緑深い伊豆高原の森に癒されてはいかが。



今日の献立を少しご紹介




お酒は新政のNo6 微発砲酒でまるでシャンパンのよう。



八寸:巨峰の菊花酢和え、酢〆かますの炙り棒寿司、静岡鶏の松風、むかご、いちょう丸十、伊豆沖でとれた本海老の老酒漬け、地物白鯖ふぐの唐揚げ、獅子唐



御造:金目鯛の焼霜造り、真鯛、カンパチ



蓋物:農家直送里芋の饅頭、銀杏入り、鱶鰭の姿煮のせ、芽蕪、にんじん、松葉柚子



中猪口:洋梨と山葵のソルベ



焼物:秋鰆の自家製塩麹漬け、三種のきのこのせ、ザクロ、春菊



御飯:栗おこわ 留椀:蕪の摺り流し 香の物



静かになった虫の声に耳を澄ませると風が冷んやりと感じる季節。うさぎが月で餅をつく秋の夜長。


日帰り、7つの貸切温泉と昼御膳

森の木漏れ日がこころなし柔らかく感じる。仰ぎ見る空の青さは夏のそれとは違い、高く、澄み渡る。蝉の声はもうしない。少し遅めのお昼をいただきながら、雲上亭から眺める花吹雪の森。


花吹雪・昼膳(先付、八寸、御造、煮物、御飯、留椀、香の物、料理屋菓子)

和食のお料理は、味を楽しむ以外に季節を楽しめる。「目で見る」「味わう」「香りを嗅ぐ」「舌触り」や「のど越し」「歯ごたえ」「音」。四季だけでなくその移ろいを五感で感じ取る愉しみ。過ぎゆく季節を惜しみ、到来する季節をいち早く感じ取る。



八寸:白瓜と胡麻麩の胡麻酢和え、炙り〆かますの棒寿司、静岡県産美味鶏の松風、銀杏、いちょう丸十、目光の南蛮漬け
「お料理は季節の先取り。秋は特に「香」を意識して献立しました。香ばしさが素材の味の深みを引き出してくれます。季節は移りゆくもので「“今日から秋”とはならないところが難しい。それでも“秋をお知らせする”という気持ちで支度しました」と料理長。


脂がのって旨味たっぷりの地魚「目光」


「9月1日から底引き網が解禁となったので、この時期ならではの地魚です。今日は南蛮漬けにしてみました」
深水200mから600mの深い海で採れるメヒカリは夏から秋にかけて旨味が増すという。やや小ぶりの白身の魚で身も骨も柔らかく天ぷらや南蛮漬け、塩焼きにしていただく。



御造:太刀魚、魴鮄


伊東の海は地魚の宝庫

年間100種類以上の魚が水揚げされる伊東。夏から秋にかけて旬を迎える太刀魚は焼くと香ばしく、脂がありふっくらとした美味しさがある。いかつい姿をした魴鮄はお刺身、唐揚げ、塩焼き、何にしても美味しい。お刺身は甘味があり濃厚な味わい。



煮物:契約農家直送 丸茄子の揚げ煮・海老真薯・春菊餡掛け・白髪葱と茗荷・黄柚子
「花吹雪のお料理には、小布施の契約農家から直送される野菜を使っています。今日は小布施丸茄子を揚げ煮にしました。海老真薯は40年前から献立に入っていますが、人気のひとしなです」


賀茂茄子に引けを取らない美味しさ、小布施茄子


小布施丸茄子は地元小布施町でも愛され続けている伝統野菜のひとつ。漬物、焼き物、揚げ物、煮物とさまざまな料理で親しまれている。北信濃の郷土食「おやき」には欠かせない。果肉がしまって煮崩れしにくいと言われ、ほのかに甘い特有の風味。



御飯:天然きのこおこわ
なめこ、さわもだし、むきたけ
「耳慣れない名前のきのこですが、旨味があって美味しいんですよ」
“なめこ”は主にブナの倒木や切り株に群生する。”さわもだし”と”むきたけ”はブナ、ナラ、クヌギなどの倒木や切り株に群生する。山の味、森の香りを楽しめる秋のおこわです。


地のもの、旬のものを味わいながら秋を堪能して湯に浸かる。100%掛け流しの温泉は7つの貸切風呂の中から選ぶことができる。


7つの貸切温泉→https://www.hanafubuki.co.jp/onsen/
日帰り7つの貸切風呂→https://www.hanafubuki.co.jp/topics/2022-1005/


秋の七草


万葉集の歌が始まりと言われている秋の七草。春の七草は七草粥にして無病息災を祈願するものですが、秋の七草である萩、尾花、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗は、花を愛でるものだそう。花吹雪の敷地内にも秋を告げる可愛らしい花を咲かせています。



萩:秋の風情を感じる萩の花。秋の七草と言えば赤色の萩の花を思い浮かべます。



藤袴


常盤色の中に辛子色が混じって秋風に揺れる。桜紅葉はいちはやく色づいて朱へと変わって行く。伊豆高原の秋は、いつもゆっくりと歩み来る。




灯台躑躅






夏の養生、あわび、天然きのこ、掛け流しの湯

ツクツクボウシの声が聞こえると、移りゆく季節を感じる初秋。今年は、観測史上最短の梅雨で、国内でも6月には40度を記録した地域もあるほどの炎夏だった。9月に入ってからは、蒸し暑さが堪える猛暑日も過ぎ去り、やれやれ朝夕過ごしやすくなった。森林を吹き抜ける緑の匂い酷熱を乗り切った身体を労わるように都会を抜け出そう。


100%源泉掛け流しの湯


常に新しい源泉が流れ込む掛け流し湯は、温泉好きにはとても魅力的。数ある温泉の中でも加水、加温、循環をしていない源泉掛け流しは意外と少ない。花吹雪の7つの貸切風呂は、森の緑に囲まれながらお湯を堪能。湧き出た温泉の成分を身体に受けてまずはリフレッシュ。


ぶどうは夢の長寿薬?

本当の夏バテは涼風の立つ頃に来るという。なんとなく体が重い、眠れないなど疲れが取れないまま日が経つにつれてバランスも崩しがちに。そんな時は自然の恵みをふんだんに使った手料理がカラダの中から癒してくれる。素材選びも身体を思ってのこと。料理長の気遣いが染み入るよう。


長七お献立


先付 巨峰と春菊の菊花酢、炙りホタテ、占地

ポリフェノールが体に良いのはご存知のことと思う。抗酸化作用で老化防止、発がん防止の効果もあるとか。さらにストレスへの耐性、運動機能の向上も期待できるそう。赤ワインが持て囃されるのも頷ける。



八寸 山海の幸をひとくちずつ。季節を感じさせる贅沢な一品にお酒も進む。
白瓜と粟麩の胡麻酢和え、炙り〆かますの棒寿司、鮑の味噌炊き、静岡県産美味鶏の松風、伊豆産本海老の老酒漬け、銀杏、いちょう丸十


神話でも希少な贈物、あわび


伊豆では海女漁が古くから行われ、鮑、サザエ、トコブシ、天草などを素潜りで獲る。夏が旬の巻き貝、鮑。縄文時代から食され、遺跡に出土しているという。海深く潜って獲る美味しくて希少な鮑は、伊勢神宮への献上品であったそう。あわびは薬膳にも用いられ、体内の熱を取り除き、慢性疲労や不眠にも効果があるとされる。


初秋が一番美味しい梭子魚


「秋カマスは嫁に食わすな」という諺があるのだとか。秋茄子、秋刀魚と並んで「美味しい」カマスは秋刀魚より少し早い初秋に脂が乗ってくる。炙り〆にしたカマスは香ばしく、酢飯とよく合う。


夏烏賊の薬膳効果


御造 金眼鯛の焼霜造り、ほうぼう、真烏賊



80種類あると言われる烏賊の中でも夏から秋にかけて美味しい「スルメイカ」のことを地方によって「真烏賊」「夏烏賊」と呼ぶ。高タンパク、低カロリーで、魚の2倍ものタウリンを含む「真烏賊」は、疲労回復、免疫機能維持に効果を見るとのこと。冷え性や貧血、肌荒れに悩む女性に薬膳としての効果も期待できるそう。


秋茄子の強力な抗酸化作用「ナスニン」


煮物 契約農家直送 丸茄子の揚げ煮、海老真薯、春菊餡掛け 白髪葱と茗荷 柚子


皮ごと頂きたい秋茄子。ふっくらとした果肉に出汁の効いた餡がよく合う。



キャラクターのように可愛らしい名前の「ナスニン」とは、茄子の美しい紫色の皮に豊富に含まれている天然色素のこと。ポリフェノールの一種で茄子に含まれるものを「ナスニン」という。赤紫蘇やブルーペリー同様に目の疲れを癒し免疫力アップやアンチエイジングなどの美容効果もあるそう。



伊豆高原産すももと山葵のソルベ


ブランド和牛でパワーチャージ


静岡牛「葵」の炭火焼き藁の燻香仕立て、揚げ針牛蒡、菊花、焼目寄せ丸十


栄養素を語るまでもなく、力がでそうな美味しいお肉。柔らかい身と良い香りが食欲を蘇らせてくれる。エネルギー代謝に欠かせないビタミンB群、良質のタンパク質と脂質は美容にも欠かせない。


天然のサプリメント「きのこ」


御飯・留椀・香の物


天然きのこは味も香りも格別。ほとんど一般には流通しないので希少な花吹雪の「天然きのこおこわ」はこの季節だけ。



生薬としての歴史は古く紀元前3世紀とも言われているきのこ。その薬理効果は漢方、薬膳に限らず様々な健康価値が評価されている。最近では「腸活」とか「菌活」と整腸効果に人気があるよう。きのこが天然サプリメントと言われるのは、肝臓で活躍するアミノ酸「オルニチン」の働きが疲労回復に貢献していることに由来する。


伊豆、天城の山の幸、伊東の海の幸を頂き、豊かな気持ちになってくる。美味しいものには人を幸せにする力がありますね。


伊豆高原のちいさい秋みつけた。

山々は移ろう季節の色重ね

各地で紅葉のニュースが聞かれ、燃えるような赤いモミジ、黄金に輝く銀杏並木の映像がYouTubeやInstagramなどSNSのタイムラインを賑わしている。濃い緑から黄緑へ。黄色、橙色、そして燃えるような赤へのグラデーションがまるで織ジュータンのように美しい。近年は諸外国からも日本の紅葉の美しさの評価が高まっているという。


日本は、他国に比べて落葉広葉樹の種類が多いのが、紅葉が美しいと言われる理由の一つのようである。深まりゆく季節とともに、移りゆく木々の色あいは変わっていく。その年の気候や湿度によって、同じ色合いにはならないことも一層その美しさを引き立てているのかもしれない。

季節の足どりも、ゆっくりな伊豆

今年の紅葉は1週間から2週間程度遅れているとか。 伊豆高原は冬も暖かいことから、紅葉はゆるやかに進んでいく。12月の中旬以降でもまだまだ紅葉狩りが楽しめるので、これから計画しても間に合いそう。小さな秋を探してみてはいかが。



花吹雪の玄関では山吹色の石蕗の花がお出迎え。ツヤツヤとした葉が名前の由来。初冬を感じる多年草で、季語としても用いられる。



「コツン」「パチン」と屋根を打つ音。うさぎの森に住むリスの悪戯?それとも野鳥か。 「今年は木の実の成り年ですよ」と支配人。倶楽部ハウスの屋根をたたく「どんぐり」の音。そういえば、エントランスにも小道も歩くとプチプチと音を立てるほどにたくさん落ちていた。




普段なら目に入らないような小さな秋。時の流れもゆっくりだからこそ、気づく伊豆高原の晩秋。






リスが巣作りをしている。子犬が鳴くような声で威嚇する。運が良ければ、橋の手すりを駆け抜ける様子を身近に見ることができるかも。




黒文字の林も秋の訪れ。足音を立てないようにそっと、そっと近づいているよう。「もういいかい。まあだだよ」





抜けるような青空はきっと、コバルト色した伊東の海が鏡に写っている様のなのかも。木漏れ日と陽に透ける赤や黄色の葉。思い切り深呼吸をしよう。





実りの秋に感謝していただく自然の賜物

農作物に恵まれる季節、料理長の腕がなる。山からの贈り物と海のごちそうをふんだんに使った今日の献立。



先付:胡麻味噌焼き



八寸:胡麻麩と黄菊の胡麻酢和え、炙り〆かますの棒寿司、鮑の味噌炊き、静岡県産美味鶏の松風、伊豆産本海老の老酒漬け、長芋、いちょう丸十



お造:金目鯛、カンパチ、タカベ



蓋物:契約農家直送里芋の饅頭 銀杏入り、鱶鰭の姿煮、芽蕪、にんじん、松葉柚子



中猪口:洋梨と山葵のソルベ



焼物:静岡牛「葵」の炭火焼き藁の燻製仕立て、揚げ針牛蒡、菊花、焼目百合根茶巾、ザクロ、特製たれ



御飯:三種の天然きのこおこわ、軸三ツ葉
留椀:契約農家直送馬鈴薯の摺り流し、揚げ海老真薯、粉山椒
香の物:胡瓜の黒文字漬け、エリンギの粕漬け、汐吹昆布



料理屋菓子:柿のクリームチーズのせ、梨の水晶寄せ


料理長が勧めてくれた希少酒、新政のNo6の爽やかでフルーティなお酒も相まって、今宵もすっかりほろ酔い気分。冴え藁たる月夜の掛け流し。湯加減でも季節の変わりゆく様を味わえる。



豊穣の秋、豊かに咲きこぼれる萩の花

月初に寒気が流入したとかで、今年の紅葉は少し早く楽しめそうだとのこと。そんな朗報を耳にすると、そわそわしてしまうのは私だけかしら。本格的なデジイチはもちろん、最近のスマホもカメラの性能が素晴らしい。山里の秋、美しい自然の色重ねを切り取ってみようと定宿を訪ねた。紅葉狩りもさることながら、晩秋の天城は山の幸、そして伊東港の海の幸も期待できそう。



11月第四木曜日 収穫感謝祭「thanks giving day」と言ってアメリカでは有名な祝日の一つだそう。学生の頃、学校行事にもあったのを思い出す。果物や野菜を家庭より持ち寄って祈りを捧げた後にそれらを持って高齢者施設や子どもの施設を訪問したもの。今年はそういった行事はなかなか難しいのかもしれない。



フランスを発端に今では世界中が祝うボジョレーヌーボーは11月の第3木曜日。 2020年は、降水量が少なく暑い日が続いたことから、「完熟した果実の香りがあふれる芳醇(ほうじゅん)な味わいがする」という。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で輸送期間に余裕を持たせたため、例年より10日ほど早い到着となったそう。11月は何かと食欲をそそることが多い。



日本も昔から五穀豊穣を祝う習慣が各地で行われて、宮中や神社でも「新嘗祭」をお祝いしている。天候に左右され、自然と戦いながら育てた稲の収穫は日本人にとって「命」そのものであったのだろうと思う。収穫後の米に麹や酵母を加えて発酵させれば日本酒に。12月になると本格的な新酒仕込みも始まりを迎える。



静岡県は「吟醸王国」と呼ばれるほど高品質な日本酒を産み出す銘醸地だというのをご存知でしょうか。日本酒の品評会で多くの賞を受賞する静岡の地酒。2008年の洞爺湖サミットに起用されたのをキッカケに一躍注目を浴びるようになったのだとか。フルーティな味わいが人気の決め手なのだそう。その秘密は独自の酵母「静岡酵母」によるもので、りんごやマスカットの香りがするものもあるのだと聞きます。



日本酒の原料は水と米だけとシンプルなもの。富士山や南アルプスの豊富な水源に恵まれた静岡は名水の宝庫。また、静岡県の杜氏(とうじ)は出身地が幅広く、経験豊かな当時が腕を競い合う環境が地酒をハイレベルなものに育て上げているといいます。
入手しにくい「プレミアム酒」として珍重される静岡の地酒。今年の出来栄えはいかに?



今夜は豊かな秋の恵みを芳醇な香りの静岡の地酒でいただくことにしようか。



磯自慢 純米吟醸
フルーティな吟醸香が爽やか。淡麗な味わい。柔らかな甘みと後口の酸味。料理との相性がいいお酒。



先付:胡麻味噌焼き 伊豆あおり烏賊と鱈の白子
コクのある甘みの胡麻味噌と旬の烏賊。白子の濃厚な旨味。



八寸:鮑の味噌焼き・自家製いくらと伊豆明日葉と干椎茸のお浸し・〆かます炙り寿司・静岡美味鳥の松風・柿の胡桃白掛け
目にも楽しい八寸。〆かます炙り寿司は皮下の味わいに旨味が。



お造り:かつお・金目鯛・ほうぼう・赤モク寄せ
地魚は酒のアテ。楽しみの一つ。



蓋物:静岡産海老芋の饅頭
海老芋饅頭の上にフカヒレの姿煮。和に少しの中華テイストが効いている。



焼物:秋鰆の自家製塩麹焼き
秋から冬が二度目の旬という鰆。駿河湾では秋が主だそう。


ブルームーンと月うさぎ伝説

今年の秋はまるで駆け足のよう。酷暑の夏が過ぎたと思ったら、朝夕めっきり涼しくなったこの頃。鰯雲に燃えるような夕焼けが刻々と時を刻んでいく。ため息が出るほど美しい。


春先からステイホームや生活の変化で疲れた心と身体を癒したいと思うと、居ても立ってもいられなくなる。そう言えば、踊り子号がリニューアルしてより快適になったと聞く。今からでも飛び乗って常宿で秋の夜長を満喫するのがいいかも。

10月のお月さま


今年の中秋の名月は10月1日。十五夜と呼んで昔から月を楽しむ習慣があるけれど、ブルームーン(Blue Moon)と呼ばれる満月をご存じでしょうか。魅惑的なイメージがするこの月は、直訳の「青い月」ということではなく、「ありえない・滅多にない」という意味から来ていて、今では「ひとつきに満月が2回ある場合の、2回目の満月」を指すことが多いとされます


2020年の10月は満月が2回。10月2日朝6時05分と、10月31日夜23時49分頃だそうなので、ブルームーンにお目にかかることができるかもしれませんね。

月うさぎの伝説


御伽噺では「月にうさぎが住んでいる」と。月うさぎ伝説にも諸説あるよう。一般的に言われているのは次のようなお話。
『昔、あるところに兎と狐と猿がいました。ある日、疲れ果て飢えた旅の老人に出会い、3匹は老人のために食べ物を探します。猿は木の実を、狐は魚を獲ってきましたが、兎は頑張っても、何も持ってくることができませんでした。そこで悩んだうさぎは、「私を食べてください」と火の中にとびこみ、自分の身を老人に捧げたのでした。その老人とは、3匹の行いを試そうとした帝釈天(タイシャクテン)という神様でした。帝釈天は、そんな兎を哀れんで、月の中に甦らせて、皆の手本にした。』というお話。



では、どうしてうさぎは餅をついているのか。というと「満月」のことを「望月(もちづき)」とも言っていたことから、それが転じて「餅つき」になったという説も。

月の呼び方いろいろ


「十五夜」の月見が盛んになったのは、平安時代なのだそう。
月見は800年代中頃に中国から伝わって貴族の間に広まった催し。月を見ながら酒を酌み交わし、船の上で詩歌や管弦に親しむ風流な習慣だったようです。 貴族たちは空を見上げて月を眺めるのではなく、水面や盃の酒に映った月を愛でたのだとか。平安の貴族の方々は、なんとも豊かな感性。



「十三夜」


中秋の名月の次の名月のこと。旧暦の9月13日から14日の夜にあたる。大豆や枝豆、栗を供えることから「豆名月」、「栗名月」と呼ぶことも。十五夜より少しかけのある十三夜は秋晴れの日が多く、十五夜と同じように月が美しいと言われます。2020年の十三夜は10月29日。

「十日夜」(とおかんや)


半月よりすこしふくらんだお月さまの呼び名、「十日夜」は、旧暦10月10日。月齢が十日目にあたるので「十日夜」と呼ばれる月なのだそう。2020年は11月24日。

「十六夜」(いざよい)


中秋の名月の翌日の月。2020年の十六夜は10月2日です。(十五夜の翌日)
十六夜と書いて「いざよい」と呼ぶその由来は、「猶予う(いざよう)」という言葉に由来するそう。「いざよう」とは、躊躇するという意味の古語です。十六夜の月は、満月の十五夜の日より、周期の関係で50分遅くれで現れます。その遅れている様を、「躊躇しながら出てきている」と「猶予いざよいの月」と呼んだのだそう。日本語って美しいですね。



他にも、「立待月」(たちまちづき)十六夜(いざよい)の月よりも遅く、夕方、立って待っている間に出る月のこと。
「居待月」(いまちづき)18日目は、待ちくたびれて座ってしまうので居待月。
「寝待月」(ねまちづき)19日目は、もう床に入って待つから「寝待月」。
「更待月」(さらまちづき)20日目は、夜も更ける頃なので「更待月」。
「有明月」(ありあけづき)26日目は、夜明け(有明)の空に昇るから「有明月」。


月の名前を知って月を眺めると、その美しさもまた、ひときわ冴えて見えてくるよう。夜空の月を見上げていると、去りゆく夏と訪れる秋の風に心が癒される気がしてきます。


さてさて、今夜は月の美しさを堪能しながら、花吹雪自慢の献立「長七」を美酒と一緒に楽しむとしましょうか。作物への感謝の気持ちも込めながら。


先付 半月のような帆立と菊の花がお月見を思わせます。



八寸 モロヘイヤの白和えは料理長の自信作
酢〆にした炙りかますの棒寿司は日本酒が合う。



お造り



蒸物 地物甘鯛の蕪蒸し



天城黒豚の炭火焼は脂の甘さがこっくりとした旨さ



取れ始めたばかりの旬の味、栗おこわ
お椀は新馬鈴薯の摺り流しに松茸が香り高い秋の味覚



料理屋菓子は月見しぐれ



お月見のポイントにこんなところも。



花吹雪うさぎ棟を抜けて、森へ続く小径にあります。


穏やかな小春空、森はかえで紅葉の五衣。

寒暖の差が激しい天城に比べて 海岸に近い城ヶ崎の秋は、ゆっくりとした足どり。
錦繍のように染める紅葉も情熱的で美しいけれど 刈安色の石蕗が出むかえる常宿はホッとこころが和む




敷地内の四つの宿泊棟より今日のお部屋は日本の色棟をチョイス
赤・茶・青・紫をテーマにした4室。 いずれも、日本の伝統色で室内をアレンジ。




自然に一番近い茶で彩ったお部屋「茶」
400色以上もあると言われる日本の伝統色は一言「茶」といっても70色以上あるのだとか




四季のうつろいの中で名付けられた和色は、 季節の風情や草花に由来する美しい名前ばかり
花薄、萩襲、朽葉、深梔子、焼栗。 想像しただけで、嫋やかなイメージがする。




平安の女性達のかさね装束の配色美においては 初紅葉、黄菊、紫の匂、花山吹、雪の下など。 繊細な感性から生まれた豊かな色がさね、 紅葉の美しさも、緑から朱へ移りゆく様を愛でたのだとか




森へ抜ける小径を彩る草花も味わい深く。 移りゆく季節の切なさを感じる秋の気配











源泉掛け流しの湯は、ちょうど良い湯加減
気温が低くなってくると自然に湯が冷めて 心地よい温度になる。 そんなところにも移りゆく季節を感じるもの




先付
「伊東産金目鯛の葛打ちと雲丹の銀餡掛け」
伊豆は鮮魚の宝庫、金目鯛は産卵前が旬。 伊東産の地金目は特に脂ものって格別の味




八寸
趣向をこらした一皿に料理長の情熱を感じる一品一品
「冬枯椎茸のお浸し いくらのせ」
自家栽培の原木椎茸の旨み。
伊東港付近にかますの群れが来ているのだとか。 炙ることで旨みをさらに引き出した「炙りかますの棒寿司」
地酒は初亀の秋上がりを冷で




鮑は酒蒸し
アワビは生で食すよりも蒸した方がぐっと旨みが増すそう。 肝はソースに仕立て、柔らかい食感とともに海の香り。 一手間かけた大人の酒肴に舌鼓。




天城の山葵田で育った紅姫あまごの松茸巻き
「あまご」は鮭の仲間。 海に下らずに河川にとどまったサツキマス。 渓流でも最上流に生息し「清流の女王」と称されるよう。 丸みのあるジューシーな味わいは女王そのもの。




深まる秋はこれから
暖かい伊豆は寒時雨の時でさえ、ほっこりと過ごせそう