冷おろしといただく夏の名残と秋の旬

暑いかった夏もようやく鎮まり、秋がかけ足で来た。今年の夏は「命に関わるほどの暑さ」と言われるほど、各地の最高気温を更新した。涼を求めて行った高原の避暑地も、エアコンがないので返って猛暑となったところもあるほど。


涼やかな秋の風に乗って虫たちの声が聞こえてくる晩には、冷下ろしで旬をいただこう。季節の移り変わりを献立でも味わいたい。



先付:巨峰と春菊の菊花酢和え、炙り帆立


今宵は限定酒、「開運」純米冷おろし。初秋、料理長イチオシの静岡県の地酒。秋を告げるお酒だとのこと。



「冷おろし」は冬に絞った新酒を劣化にないように火を入れ加熱殺菌して大桶に貯蔵。秋になって2回目の火入れを行わず、「冷や」のまま大桶から樽に下ろして出荷したことからこの名がついたそう。絞ったばかりの新酒はまだ熟成していないので荒さがあるが、一夏越して味わいが深くなるのだという。



八寸:胡麻麩と白瓜の胡麻酢和え、炙り〆かますの棒寿司、静岡鶏の松風、地物深海赤海老の老酒漬け、鮑の味噌炊き、銀杏の素揚げ、いちょう丸十


料理に一粒入っただけでも秋を思わせる銀杏。いちょう丸十が添えられて色づく紅葉を思わせる。 ところで、「銀杏」と書いて「ぎんなん」とも「いちょう」とも読む。ダブルネームの「銀杏」は、中生代(2億5千万年前〜6千万年前)から存在していた植物で、生きた化石とも言われるそうだ。収穫から食べるに至るまでにはなかなか苦難を伴うが、滋養強壮に良いとされるのはそんな背景にもあるのかもしれない。



御造:金目鯛の焼霜造り、旬の地魚・黒鯛、真鯛


鯛3種の食べ比べとなった今日の御造。なんとも贅沢である。柔らかく、上品な旨味の金目鯛。香ばしく焼いた皮と脂が美味。濃厚な味わいの黒鯛はワイルドな感じ。真鯛は淡白で甘味のある味わい。こんな楽しみ方も伊東港が近いここならでは。



煮物:契約農家直送 丸茄子の揚げ煮、揚げ海老真薯、薬味のせ


その手で来たか!と唸らせる一品、煮物。今回は関西風の出汁で仕上げてあった。秋茄子の美味さが引き立つ。



中猪口:洋梨と天城山葵のソルベ


季節の果物に天城の生山葵を効かせた大人のソルベ。洋梨の香りと甘さの次に来る山葵の香りとピリ感。



焼物:静岡牛「葵」の和製ロースト、農家直送ズッキーニたれ、舞茸、松の実


濃厚でコクのあるズッキーニのたれが、柔らかく品のある旨味の静岡牛をさらに引き立てる。冷やおろしが進む一品。



御飯・留椀・香の物:牡蠣とむかごの炊き込み、丸十の摺り流し、胡瓜の黒文字漬け、水茄子漬け、汐吹昆布


秋らしいご飯と汁物。



料理屋菓子:自家製栗蒸し羊羹


宿の敷地内に茶店ができ、甘味を提供。自家製のデザートは別腹でいただく。



今年は中秋の名月と満月が重なる年。うさぎの餅つきも賑やかになりそうだ。



掛け流し温泉を満喫した翌朝は、朝食前にウォーキングはいかがか。伊豆高原「海と森の散歩道」は花吹雪から対島川に沿って海を見ながら八幡野港へ続く散策コース。ちょうど日の出から30分の頃。晴れていれば絶景。




大淀、小淀と呼ばれる潮溜まり。地元の子どもたちは9月までここで泳ぐのだとか?溶岩が海に流れ、急激に冷やされたためにできた地形だそうだ。



岩壁を見下ろしながら吊り橋を渡りと森の中へ。




うるしの落ち葉は、秋の足音。





木立の合間から見る、朝のサンロード。







花吹雪の周りにも小さい秋が。

暮らすように旅する、連泊の醍醐味

チェックインから翌朝のチェックアウトまで、あるようで時間がないものだ。連泊の醍醐味の一番は移動の慌ただしさから解放されることではないか。



荷物をおいたまま、中1日あると過ごし方がグッと変わる。あえて連泊して気に入った土地に馴染んでいくのも旅の楽しみ方のひとつ。そこでしか味わえない体験をすることで忘れられない思い出となっていく。


城ヶ崎周辺は絶壁が遊歩道に整備されていて、城ヶ崎ピクニカルコースや城ヶ崎自然研究路など自分のレベルに合わせてハイキングを楽しめる。スニーカーで豊かな地形を踏みしめながら、絶景を楽しみながら、うっすら汗をかくのも時間にゆとりが持てる旅ならでは。



伊豆高原には博物館や美術館が点在している。アーティスティックな1日はどうだろう。ティディベアミュージアム、アンティークジュエリーミュージアム、ちょっと足を伸ばしてニューヨークランプミュージアムや高橋京子花の絵美術館もオススメ。ひとつひとつの美術品に思いを巡らせながら鑑賞してみては。


アンティークジュエリーミュージアム
https://www.antique-museum.com/guidance/


ニューヨークランプミュージアム
https://nylfmuseum.com/exhibition/


高橋京子花の絵美術館
http://www.xn--u9j623ublby5edrjyj1a.jp/information.HTM


アートに親しむ工房めぐりは作家気分で体験したい。ひとりで夢中になるもよし、誰かと一緒に作品作りもよし。手織りのコースターやタペストリー作り、陶芸、作家の作品も目の保養。



アトリエkai
https://itospa.com/spot/detail_54234.html


陶芸体験工房えんのかま
https://itospa.com/spot/detail_50004.html


アトリエロッキー万華鏡館
https://itospa.com/spot/detail_54268.html


カフェめぐりやベーカリーめぐりもできそう。滞在時間が長くなれば、宿の主人やスタッフとの会話も増える。まるで昔からの知人であったかのように気持ちの温かさが増していく。地元に暮らす人からのオススメを気軽に聞けるのも滞在型だからなのかも知れない。



出かけずに、ただゆっくりする




お風呂巡りも堪能したい。一晩ではなかなか周りきれない7つの貸切り風呂も、翌朝も昼間もゆっくり過ごせると思うとひとつひとつ味わいながら全制覇できるのでは。 早朝の露天ももちろんいい。朝食後、もう一度お気に入りの湯船に浸かる贅沢。湯治気分で何度も出たり入ったり。部屋着で昼までテラスで読書もよし。




昼の風呂上がりには、茶店でいただく涼。気になりつつも滞在中には満喫できないことの多い甘味。雲上亭や緑陰亭でスイーツやお酒を楽しむのもゆとり旅。


連泊の献立バリエーションに舌つづみ

料理長の腕が見せどころ。連泊のお客様には普段季節の献立にはないメニューが登場すると言う。伊東港で揚がる地魚と天城の山菜、長野の契約農家で採れた高原野菜が豊かに彩る。



さざえの壺焼き花吹雪風



金目の胡麻茶漬け



遠くから幼馴染が訪ねて来てくれたかのように迎えてくれる宿。「ただいま」と言って再び戻ってくる感覚。こころも身体もバランスを取り戻したかのように生き返る気分。心ゆくまで満喫できる連泊のゆとり旅が近ごろ魅力のようだ。

日帰り温泉は貸切風呂でちょっと贅沢な気分

100%掛け流しの温泉を独り占めできる贅沢

誰に気兼ねすることなくゆっくり楽しめる貸切風呂。夏に温泉?と思いきや、夏こそ温泉。森の中で楽しむ露天風呂は、豊かな緑とさわやかで心地よい風に吹かれて温泉に入る楽しみを味わえる。



温泉と夏バテの関係?

エアコンの効いた涼しい部屋でずっと過ごしていると、体温調節機能が衰えて、うまく体温を調整することができなくなり、熱中症のリスクが高まると言われている。「汗をかかない」ことがリスクを高める原因となっているそうだ。温泉は夏の冷えた身体を温め、血行を促進、熱中症になりにくい身体づくりが期待できそうだ。



また、「夏バテ」の原因の一つは「自律神経の乱れ」。日中の強い紫外線や、室内外の温度差、夜になっても気温が下がらない熱帯夜で夏の疲れは溜まっていく。日頃シャワーで済ませてしまっているけれど、ゆったりとお湯に浸かることで自律神経のバランスを保つのに効果的だという。38℃くらいのぬるめのお湯につかることで、副交感神経が優位に。体がリラックスモードになって疲れが取れていく。



自然を満喫できる夏の露天風呂


日常生活からしばし離れ、鳥の囀りと木々の揺れ動く涼風の中に身を置いてみる。都会から訪れる伊豆高原はけして標高が高いわけでもないのに涼しいのは緑深い森が天然のクーラーになっているのだろうか。森にはさまざまな鳥が飛来するので、じっくり声を聴き比べて過ごすのも素敵な寛ぎ方。



日帰り温泉としての利用は7つのタイプが違った貸切風呂の中から一つ。50分過ごせる。タオルは各風呂に備えてあるので、気軽に立ち寄り湯ができる。


100%掛け流しのお湯。夏はそのままだと熱いので、水を足してぬるめにしてゆっくり浸かるのをおすすめする。
お風呂に入る時に離れ離れにならないから、特にご夫婦やご家族だけで寛げるところが貸切風呂のいいところのひとつ。
7つの貸切風呂

湯上がりにコップ一杯の水を


お風呂上がりの汗がすっと引き、失った水分の補給も忘れずに。


湯上がりを過ごすのは、敷地内の見晴らし橋やうさぎの森の木陰に点在するベンチで涼むもよし、甘味処「雲上亭」「緑陰亭」であんみつを食べながら涼を取るもよし。ランチ「昼御膳」付きもおすすめしたい。


日帰り、7つの貸切温泉と昼御膳
貸切温泉と和スイーツ
森のカフェ、森の宿に吹く緑の風
日帰り、7つの貸切温泉と昼御膳
*駐車場20台以上あり

初夏の和ハーブ、甘茶、紫蘇、夏茗荷、山椒

今年は早い梅雨入りと台風でちょっと番狂わせな今年の初夏となった。5月末から7月までとは長い雨季である。雨を楽しむ工夫も必要。桜の花が開いたような形の傘やおしゃれなレインブーツやポンチョなどをチョイスしてみるのもいい。



紫陽花と甘茶どうちがうの

梅雨時ならではの美しさ代表格は、雨に濡れた紫陽花だろう。いくつもの花が鞠のように集まって咲く大輪「ホンアジサイ」が一般的。線香花火のように外側に装飾花が咲いているガクアジサイ。これはアジサイの原種だそう。どちらも日本で昔から愛されている花で、上生菓子や浴衣のデザインなどにもアジサイは良く目にする花である。


関東以西の山間部に自生する「ヤマアジサイ」はホンアジサイに比べて葉が細い。アジサイは色も種類もさまざまで本当に見ていて飽きない。最近では西洋種の「カシワバアジサイ」や「アナベル」もガーデニングで人気だという。伊豆にも紫陽花の名所はいくつもあって開花期も長いので雨の日のお出かけにはアジサイのお花見をオススメしたい。



あじさい



ガクアジサイ


ガクアジサイと見分けが付かないのが「甘茶」。ヤマアジサイの甘味変種だそう。うさぎの森は、この甘茶が見ごろになる。一般的にアジサイは食用にならないが、「甘茶」はその名の通り、葉を乾燥させて煮出すと甘く、甘味は砂糖の1000倍ほど。また、抗アレルギー成分が含まれているとして健康茶としても飲用されている。一見そっくりな甘茶とガクアジサイの見分け方は、葉に光沢があるかないか。光沢がないのが甘茶なのだそう。



甘茶


チェックインの時に出してくれる、ウェルカムティ「森のお茶」には甘茶がブレンドされており、ほのかな甘さを感じることができる。黒文字やハーブのブレンドが奥深い味わいで旅の疲れを癒してくれる一杯だ。




掛け流しの湯に浸かり、雨の音を聞きながら過ごす宿は究極のリラクゼーション。どこか特別な時間のような気がする。雨を楽しむためにあるように森の中に佇む宿泊棟で、恵みの雨に感謝。雨音に紛れて拍子木を打つ音が聞こえてくる。




長七 今夜のお献立

倶楽部ハウスでいただく夕餉。繊細で奥深い会席料理はお勧めの日本酒と一緒に楽しみたい。



先付:甘唐と汲み湯葉の摺流し・干し椎茸出汁の水晶掛け
旬を迎えた甘唐の摺流し。独特の甘みと風味がしいい茸の出汁と相まって喉越しに涼しげな一品



八寸:静岡鰻と紫蘇の朴葉寿司・白ずいきの水晶寄せ・鮑の味噌炊き・新丸十の蜜煮・蛤と白瓜の黄身酢掛け・合鴨の有馬煮
紫蘇独特の風味が一層味わい深い鰻の朴葉寿司。すっきりとした香りが食欲をそそる。



御造:金目鯛の焼霜造り ぽん酢水晶・鰹・紋甲烏賊
金目鯛の皮を炙った焼き霜造りは旨味を堪能できる。



煮物:鶏ガラ煮込みの鱶鰭・丸茄子の揚げ煮
コクのあるスープで煮込んだ鱶鰭と揚げた丸茄子。



中猪口:青梅と天城山葵のグラニテ
さっぱりとした口直し。山葵の辛味が爽やか。



焼物:天城の山葵田で育ったあまごの炭火焼き
身に弾力があり、ほっくりとした美味しさ。皮目の香ばしさにお酒がすすむ。 葉の影に隠れるように泳ぐ姿の盛り付けは、清流の女王と呼ばれるアマゴの美しさを表現しているよう。



御飯・留椀・香の物:夏牛蒡と静岡牛「葵」の炊き込み・冷製呉汁・胡瓜の黒文字漬け・茗荷の甘酢漬け・汐吹昆布
牛蒡の良い香りがたつ炊き込み。静岡牛「葵」の旨味と相まってご飯が止まらない。



料理屋菓子:黒胡麻葛餅・西表黒糖の黒蜜・きな粉


花吹雪の東側、駐車場の隣の森に新しい宿泊棟とお風呂ができると聞いた。来年の1月か2月ごろ完成予定だという。こんもりとした林の中の宿泊棟はどんなだろうか。今から楽しみである。



「あんみつ」に誘われて、くぐる暖簾。雲上亭と緑陰亭。

「あんみつ」このひらがな4文字、なんとも魅力的ではないか。ついつい惹かれてしまう。つるんとした喉越しと優しい甘さ。素通りはできない。


和菓子のルーツ

日本の四季と和菓子はとても密接な関係で、夏になれば涼やかな水を、春には芽吹きや花、秋葉には木の実や紅葉など、その季節を想像させるものが多い。日本古来の文化や習慣がお菓子と共に親しまれている。



日本の伝統的な菓子。和菓子のルーツを探ってみるとその歴史は古代に遡る。日本人は米、粟、稗などの穀物が主食であった。食事と食事の間に、お腹が空くと野山の果物や木の実=種子を食べていたそうで、果物の「果」と種子の「子」から菓子と言われるようになったという説もある。初めは生で食べていた木の実や種を、後に乾燥させたり、木の実の粉で粥や団子を作ったりするようになっていったという。



蜜豆は夏の季語

和菓子の代表格とも言える「みつまめ」は江戸時代末期から庶民の間で親しまれていると言われており、始まりは赤えんどうに蜜をかけて食べていた子どものお菓子「蜜豆」で、夏の風物詩であった。今では賽の目に切った寒天や白玉、フルーツ、アイスクリームなどを乗せた和風パフェとも言える豪華なものまである。



160年以上も愛されてきた和菓子「みつまめ」と「あんみつ」の違いは蜜豆に餡子を入れたかいれないかの違いだけだそうだ。餡にも「つぶあん」「こしあん」「しろあん」などお店によって様々。


花吹雪の料理屋菓子


「コース料理のデザートをもっと多くの人に食べてもらいたい」そんな料理長の思いが実現して花吹雪の「雲上亭」と「緑陰亭」が、昼間の時間に甘味処として利用できるようになった。月見門から入ると野点傘が目に入る。



緑に囲まれたなんと贅沢なお休み処か。木陰で一息つくようにしばし深緑に癒され、甘味を味わいたい。



花吹雪の「あんみつ」には自家製和三盆わらび餅入り。小豆を練り込んであるのでその食感も楽しみたい。


全国でも優良の天草が採れる伊豆。天草は磯に近く波の荒いところで育つものがよしとされ、海女が潜って採るものが最良とされるそう。 つるっと冷たい寒天は舌触りも良く、しっかりとしている。西表の黒蜜がからんでコクのある、それでいてさらっとした甘さが後を引く。


嶺岡豆腐


名物の嶺岡豆腐がコース料理でなくても楽しめるとはファンにとっては本当に嬉しい。「嶺岡」とは地名。千葉県南部、房総半島にある丘陵地、嶺岡連峰の山々を言う。この嶺岡地域で、将軍徳川吉宗公の名でインドから伝来した白牛が飼育されたのが日本の酪農の始まりとされる。その後、明治時代に千葉県が嶺岡乳牛試験場として牧場を運営することになったそう。「嶺岡豆腐」は江戸時代、徳川吉宗が鷹狩で嶺岡を訪れた際に牛乳と葛で作った「豆腐」を出したところ好評だったというのが発祥のようである。


「菓匠さんとは違い、料理屋の菓子です」と謙遜する料理長。懐石料理を出す食事処のスイーツは大人好みの上品な甘さ。コース料理の〆に出すデザートを一品の甘味メニューとして仕上げてある。


メニュー
クリームあんみつセット  1,320円
和三盆わらび餅セット    880円
黒蜜嶺岡豆腐セット     880円
ところ天(夏季限定)    880円
*お飲み物は抹茶、緑茶、ほうじ茶、コーヒーからお選びいただけます。

もちろん珈琲だけでも利用できるので、気軽に立ち寄りたい。



甘味処で涼んだ後、掛け流し湯で疲れも流そう。



今夜は歌人の名前がついた風姿棟の小和室、西行夢桜。大きく開いた窓からは深い森が見える。幾重にも折り重なるような緑の濃淡にため息をつく。


お楽しみの夕餉。今日の献立は涼やかな初夏のお料理。



先付:甘唐と汲み湯葉の摺流し、干し椎茸だしの水晶掛け、いちじく、花穂



八寸:うなぎと紫蘇の朴葉寿司、白ずいきの水晶寄せ
鮑の味噌炊き、新丸十の蜜煮
蛤と白瓜の黄身酢掛け、国産合鴨の有馬煮



御造:金目鯛の焼霜造り、大門ハタ、イサキ



煮物:鶏ガラ煮込みの鱶鰭、丸茄子の揚げ煮、冬瓜



中猪口:青梅と天城山葵のグラニテ



焼物:天城の山葵田で育ったあまごの炭火焼き



犬枇杷の葉に隠れて出された天城の山葵田で育った姫天魚。
白身は上品で身が美しく、まさに山葵田育ちの清流の女王。



御飯:夏牛蒡と静岡牛「葵」の炊き込み
留椀:冷製呉汁
香の物:胡瓜の黒文字漬け、茗荷の甘酢漬け、汐吹昆布



料理屋菓子:黒胡麻葛
黒蜜ときな粉がやさしい甘さにコクを添えている。



梅雨の花吹雪は格別。ここちよく弾む雨音が気持ちを落ち着かせてくれる。自然音は1/fのゆらぎと言われ、人をリラックスさせる効果があるそう。
部屋の窓どこからも見える深い森の草木の葉一枚一枚は、雨露に濡れて輝いている。






たっぷりと水を含んだ森にパワーをもらえる旅。

カシミヤ、キャメル、天然素材ハンドメイドの織物

柔らかな風合いの毛織物ストール。重さを感じないカシミヤのストールは、200g以下なのだそう。身につけている気がしないほどの軽さはストレス知らず。 花吹雪のショップコーナーにさりげなく展示されている作家モノのストールが気になって手に取ってみる。



冬素材だと思いがちな毛織物の巻物だが、薄く仕上げてあるものは、季節は問わないそう。実際にエアコンの効いた室内では首周りや肩に羽織りものが欲しくなる。冬用のマフラーやストールは厚めで保温に優れている分、ボリューム感も出るので合わせる洋服も選ぶことになる。薄手のものは、ボリュームもさほど出ずにファッションに影響も少ない。


カシミヤ(カシミヤ山羊)


モンゴルやネパールなどの高地に住むため繊維が非常に細かく軽くて暖かいのが特徴。柔らかな肌触りと上品な艶や光沢感があります。デリケートで「繊維の宝石」と言われるほど高級素材。


ヤク(牛)


中国、チベット、ヒマラヤの高地に住む。過酷な環境に対応してヤクは機能的に優れています。高い保湿性、柔らかな肌触り、丈夫で毛玉になりにくいメリットも。


アルパカ(ラクダ)


南米のアンデス山脈に住むペルーやボリビアです。毛の1本1本が空洞になっており、空気を溜めるので防寒性にすぐれている。軽くて保湿性が高く、滑らかな肌触り。艶感があり丈夫です。「アンデスの宝石」と呼ばれているほど。


キャメル(ラクダ)


フタコブラクダから採れる素材。カシミヤよりも太くコシがある。保湿性、弾力性に富み手触りが良い。ほとんどがナチュラルカラーで使用される。



花吹雪の近くに工房があると言う「アトリエKai」さんでは、手織の体験ができるというので予約をお願いした。歩いて2〜3分、伊豆高原の静かな住宅街にある工房には織り機や作品が所狭しと並んでいる。



初めての体験はコースターづくり。2時間ほどで2枚くらい織ることができる。



初めは機織り機の扱いに慣れなくて、同じところに左右から横糸を入れてしまいそうになる。折上がる布の左右の端の処理が出来上がりの美しさを左右するよう。



マイコースターが出来上がった。古布を裂いた糸からこのようになるとは!驚きと満足感。



アトリエkai 三条 海さん


機織りの魅力を伺ってみた。
1本の糸を折り重ねていくことで、世界にたった一つの布地へと織り上げる素晴らしさ。折前の色の掛け算だけでは仕上がりが想像できないところがまた魅力。追及したいと言う気持ちが溢れてきます。



素材の魅力について
天然素材は柔らかさ、軽さ、暖かさが魅力ですね。それぞれ特徴があって作品の仕上がりにも素材の個性が出ますね。



夏の暑い間や雨の日などでも宿からちょっとでかけて作品作りに没頭してみてはいかがだろうか?
アトリエKai 花吹雪から予約:体験料2000円+材料費500円〜




掛け流し温泉の家族風呂、24時間いつでも入れるとは宿泊するものにとって、本当に素敵なサービスだといつもながら思う。汗と疲れをさっと流して寛ぐ常宿。



今夜は希少酒、DATE7と甘鯛の松笠焼きをいただく。懐かしい思い出話が飛び出して、夕食の会話に華が咲く。

全ては黄金色の昼下がり。赤いウサギを追って・・・。

ザアーザアーと降り続く雨音を聞きながら常宿での巣ごもり。忙しなさに感けて一向に読み進まない小説の読破には最適な時期。たまには幼心に戻って児童文学も良いのでは。そんなことを思いながら倶楽部ハウスでお茶をいただく昼下がり。今日も天井の梁から赤いウサギが「ようこそ」と声をかけてくれるよう。ウサギが登場する児童文学・・・。



ルイス・キャロルの名作、「不思議の国のアリス」は世界中で演劇やオペラ、バレエなど様々な舞台化、そしてディズニーの映画にもなりましたが、ディズニー映画の中で「All in the golden afternoon」という曲がアリスと花たちと仲良くなるシーンで歌われていますね。とても楽しい歌ですが、もともとは「不思議の国のアリス」の巻頭に献呈詩として記された詩の題名で、歌の歌詞とは随分違うようです。



全てはあの金色の午後の出来事だった。

1862年7月4日の午後のこと、3人の姉妹と共にオックスフォードを流れるアイシス川でボート遊びをしているときに、姉妹のうちの次女である「アリス」に面白いお話をして欲しいとせがまれて即興で創作したのが「ウサギの穴に落ちた女の子アリスの冒険物語」なのだそう。



なぜか時間を気にしながら急いでいる白うさぎを追いかけて、不思議の国に迷い込んで行くアリスのストーリーは、とりとめのない物語で突拍子もないことが次々に起こります。この理解しがたいようなお話は、作者が小さい子どもにせがまれて即興で話して聞かせた物語だったというのも頷けます。



それにしてもルイス・キャロルの想像力には感心。そう思うのは私だけでしょうか。「ルイス・キャロル」とはペンネームで、本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドドソンという数学者なのだそう。意外ですね。てっきり女性かと思っていたら男性。小さな子どものココロを引き付けるような奇想天外なお話が即興で出てくるドドソンさんて、彼自身も子どものようなココロの持ち主だったのではないかしら?



ペンネームの決め方もセンスあると思いませんか。本名のチャールズ・ラトウィッジ「Charles Lutwidge」をラテン語にすると「Carolus Ludovicus」となり、英語の名前に読み替えると「Ludovicus Carolus」ルイス・キャロル。言葉の遊びにも長けていたとアリスの物語を読み進むと分かってきます。 ルイス・キャロルが散りばめた、言葉遊びや童謡、ばかばかしい詩の背景を知ると大人が読んでも楽しいワンダーランド。



花吹雪の敷地内にも森にもウサギが。べつだん急いでいる風でもない白いウサギや少し物思いにふけっているような赤いウサギ。ちょっと追いかけてみませんか?どんな物語になるのかは主人公の貴女しだい。全てはこれから始まる金色の午後の出来事なのです。




真夏の夜の夢「パルフェ・タムール」

一年で最も昼間が長い日、そして最も夜が短い夏至。太陽は一番高く、エネルギーが満ち溢れていると考えられ、各国で「夏至祭」が行われる。 日本では、梅雨真っ盛り。雨が続いているので夏の日差しが待ち遠しい、そして夏本番に向けて暑さが増していく時期でもありますね。



4000坪の森に囲まれた別荘宿の窓から眺める緑は潤いを増して益々パワーが感じられ、滞在するだけで自然の浄化作用やセラピー効果があるような気が。深呼吸すれば、すっと森の空気が体に染み込んでいく。


(日本の色棟・赤のお部屋から)


シェイクスピアの喜劇「A Midsummer Night’s Dream」は夏至の前夜に起こった森の妖精と貴族と職人たちのドタバタ騒ぎ。初演は1594年から1596年の間と言われ、貴族の結婚式のために書かれたとも考えられているようです。
欧州では、夏至の日は妖精の力が強まり森の中でお祭りが行われると考えられていたそうで、戯曲の背景には様々な風習が盛り込まれていますね。
劇中にはいたずらな妖精パックや妖精王オーベロン、妖精女王ティアーニアなどが登場。人間の若い男女は恋愛問題を抱えて森で落ち合う約束をする・・・。



妖精の王オーベロンが花の汁から作った媚薬。これは「ニオイすみれ」のエキス。目覚めた時に初めて見た相手を好きになるという効果があるもの。妖精パックの「うっかり」が物語の展開を思わぬ方向へ向かわせる。逆転と交差が構成するドラマはたった一夜の森の中の出来事。まさに夢の中なのですね。



別荘宿で過ごす今宵にぴったりの森のカクテル「パルフェ・タムール」を食前酒にしてみよう。世界でも珍しいこのリキュールは「ニオイスミレ」の色や香りを抽出して作られている香り高いお酒で「飲む香水」とも賞されるとか。18世紀半ばにフランス北東部のロレーヌ地方で誕生してから、たちまち人気を博したのだそう。



今夜、うさぎの森でも妖精たちが面白おかしいドラマを繰り広げているかも知れない。そんな思いを馳せながら、旬のお料理に箸を進めていこう。


初夏の宴は涼しげなお料理がいっぱい。








今しがた外で拍子木の音が聞こえた。一年で一番短い夜の始まりは、不思議で美しい瑠璃紺の空。眠りにつくにはまだ早いから雨音を聞きながら露天の湯にでも浸かろうか。


翠雨ふる別荘宿で雨やどり

梅雨の長雨と言うけれど、雨の降る様を表す言葉のなんと多いことか。
しとしと
ぽつぽつ
ザアザア
しょぼしょぼ
パラパラ
短い言葉で表現するその様を容易に想像できる。雨の降る様だけでなく、雨の呼び名は400余もあるのだとか。

春に降る「菜種梅雨」「桃花の雨」「小糠雨」
今の季節は「五月雨」「梅雨」「緑雨」
夏の夕立「洗車雨」
秋の「霧雨」「秋黴雨」「秋霖」
冬の冷たい雨は「北時雨」「山茶花時雨」「氷雨」
弱く降る「小雨」「涙雨」あげたらきりがないほど。
微妙な違いを豊かに表現する日本語は、改めて美しいと思う。



霖に森の緑は潤いをましているよう。
リズミカルに葉を叩くパーカッションに今日はどんなメロディを合わせてゆこうか、、、。豊かな森の自然を眺めながらのひととき。



円形に張り出したサンルームのような談話室があるこの部屋は603長七うさぎ。



この部屋は、「実家の両親は東京に、娘たちは東海に」というような家族にも愛用されているそう。
団欒のできる談話室のほかに和室が二つ。



それぞれの家族がリラックスできるような間取りは、さり気ない気配り。



談話室はガラス張りの植物園のようでもあり、
眺めながら身体を左右に傾けてみると、縦に模られた窓のひとつひとつがそれぞれ違う絵のようにも見える。



どこを切り取っても 持って帰りたいほど素敵な1枚。

花吹雪の各部屋には湯茶の準備がしてある。
ホテルなどにあるティパックとは異なり、上質の緑茶の茶葉が桜皮細工の茶筒に入っている。



泊まり客でも気づかないかも知れないおもてなし。

このお茶を美味しく頂くコツ、私流。
部屋の水道からは、天城山系の活水が出るのでそのまま、備え付けのポットで沸かす。



上質の緑茶は、80度程度に冷まして淹れるとその旨味を味わえる。
まず、急須に湯を注ぐ。



その湯を湯飲みに注ぐ。



そうすると、沸騰した湯は80度程度に冷める。
急須の茶こし部分に茶葉を入れ、



湯飲みの湯を1杯ずつ急須に戻し入れる。
このままだと、湯が茶こしを通るだけなので薄い。



茶こしを急須から外して、湯飲みの上に持ち、茶葉の上から急須のお茶を湯飲みに少しずつ順番に均等になるように注ぐ。美しい緑の茶を淹れることができる。


なんとも豊かな味わいだろうか。
日常の忙しさのなかでは、緑茶を急須で淹れることも少なくなったのでは。と思う。

お茶うけとして
チェックインの時に、伽羅蕗の佃煮か和三盆を購入しておくことをお勧めしたい。


梅雨の長雨の何もしたくない時に、こうして何もしないことの贅沢さを味わうのもいい。

七月ばかりに、風のいたう吹きて、雨などさわがしき日、
おほかたいと涼しければ、扇もうち忘れたるに、
汗の香少しかかへたる綿衣の薄きをいとよく引き着て、
昼寝したるこそ、をかしけれ。
                  枕草子 清少納言

雨の日の楽しみ方は平安時代から変わらないのだろうと思いながら、畳の上にごろん。

相方は読書と決め込んだよう。
読もう読もうと思いながら、一向に進まない小説とか、読み返してみたいと思っていたあの本。思いつくままカバンに放り込んで来たのだろう。



お茶のお供にお勧めしたい一品
伽羅蕗・山ごぼう・まい茸



和三盆



太古の海底岩「伊豆石」の湯殿で身体の芯から温まる
梅雨寒に意外と身体は冷えている。足の先が冷たい。湿気が多く汗をかきにくいこの季節はなんとなく不調になりやすいという。
うさぎ棟は地下に貸切風呂があるのが嬉しい。雨でも濡れずに24時間温泉を楽しむことができる。檜と伊豆石の半露天風呂は開放感があって、地下とは思えないほど。森から渡る風が薫る。



ヒュレヒュレイセポの湯サンパヤテレケの湯。ユニークな名前と思いきや、どちらもアイヌ語だそう。
ヒュレヒュレイセポは「赤いうさぎ」の意。サンパヤテレケは「物語を歌に乗せて語る神謡」の意。雨音をBGMに赤いうさぎの神謡はどんな物語になるのか、、、 などと想像しながら湯に浸かる。
じわっとカラダを温めてくれる ミネラル豊かな掛け流しの湯。湯船は伊豆石。伊豆石は太古の時代に火山活動が活発になり海底に火山灰や溶岩が堆積したもので、フィリピンプレートにより地殻変動が起こって伊豆半島が本州に衝突したときの副産物と言われている。太古の海底ミネラルが含まれていることや遠赤外線効果で湯冷めしないのだとか。丈夫な伊豆石は徳川家康の城、「駿府城の石垣」にもなっている。
湯船に浸かりながら、膝の裏をそっと撫で足のむくみをケア。疲れも冷えも湯に溶けていく様なここちよさ。

雨雫が萌黄色の葉に揺れる、雨間の森。
一時の梅雨晴れ。クラッシュゼリーがきらめく涼やかな和菓子のような森は、青時雨。雨上がりの清々しさは雨無くしては得られない別世界。



紫陽花と見間違う甘茶の花。趣きが品良くやさしげ。





甘茶の若葉を蒸して揉んだものは
独特の甘みがあり、それは砂糖の1000倍の甘さがあるとのこと。
花吹雪のチェックインの前にウェルカムティとして淹れてくれる「森のお茶」にもブレンドされている。



6月のお料理は、初夏を感じる涼しげな献立。



夏野菜の炊き合わせ。



この時期だけの希少な地魚あぶらぼうずの西京焼き。
初夏の冷酒と一緒にいただく。



梅雨時だからこそ、ここで過ごしたい。そう思う常宿の滞在。

夏の日本酒ー日高見「弥助」

日高見―(純米吟醸 日本酒度+4)

創業文久元年(1861年)、港町石巻の銘蔵平考酒造が醸す芳醇辛口純米吟醸。
和食界において、辛口と言えば「日高見」とさえ言われる銘柄です。
中でもこの「弥助」は、緻密に構築されたバランス良い酒質を持ち、日本食との相性が抜群です。
吟醸酒ながら、華やか過ぎない穏やかな含み香は、素材の味わいを邪魔することなく寄り添い引き立てます。

一合¥1000(税別)