自然に調湿する和紙、極上の宿泊棟 日本の色棟

日本の色棟は、青、赤、紫、茶 の4色で日本人が昔から愛した4色なのだそう。 花吹雪の敷地内では森の中央に位置しており、食事処や貸切温泉にも行きやすい。 四色の色でコーディネートされた部屋は、お好みの部屋の指定をいただくほどにリピートが多いと聞いた。

今夜は「茶」に滞在することに。 茶色は柿渋染め。ちなみに他の部屋、青は藍染、赤は紅花と茜で、紫は貝で染めた自然由来の染色でアレンジされている。

染めの王道と言われる柿渋染め。日本の伝統色を表現する重要な天然染料の一つである。 使えば使うほど色濃くなるという経年の変化も楽しめる柿渋染めは、天然の染料であるため、染めるたびに色合いが変わり、均一にならないのも良さ。 使うほどに色濃く、風合いも味わい深くなっていく。

「茶」の部屋は、特に和紙に凝っている。表具師・鈴木源吾さんが手がけた仕事だ。天井を見て欲しい。

和紙の柿渋染めの和紙を五重貼りにしてあるという。和紙の経師は日本の住空間のしつらえに重要な伝統技術である。最近では省かれてしまいそうな重ね貼りの工程だが、幾重にも和紙を重ねて貼る事で、強度はもちろん和紙が呼吸するように湿度を調整し、保温や防音効果も期待出来るそうだ。

襖も柿渋染めの和紙。

壁のタペストリーは、吉岡幸雄さんの作品。

江戸時代から続く染織工房で京都にある「染司(そめのつかさ)よしおか」の五代目当主だった方。日本の伝統的な染織文化の継承と研究に生涯を捧げた染色家・染織史家。 調度品ひとつひとつが作家さんの作品。今となってはありがたい逸品となったと支配人が説明してくれた。

古くは平安時代から存在が認められる柿渋染めは、染色するというだけでなく、柿渋の主成分であるタンニンが繊維や木材に浸透して防水・防腐・防虫効果や抗菌・消臭作用があると言う。

天然由来の染色の和紙で設えた部屋は、落ち着いた温かみのある空間で、和紙特有の柔らかな光の反射が「茶」の部屋の独特な癒しが感じられる。 日本の色棟はぐっすり眠れる理由が納得できる。