伊豆春、河津桜と蕗の薹

エントランスに紅梅色の可憐な花を咲かせている寒緋桜が風に揺れて愛らしい。花吹雪の庭はもう春の訪れ。今年は雪が舞う日もあった稀な年だという。この日、天城山は正午ころで2℃。道路の脇にはまだ雪が残っていた。伊豆高原は6℃。さすがに暖かい。


2月上旬から咲く早咲きの桜として知られる河津桜。大島桜と寒緋桜が自然交配したのが起源と言われている。淡い薄桃色の染井吉野と比べると花が大きく、濃い桃色をしている。桜花爛漫というように華やかな桜だけれど、ひとつひとつは俯くように咲いていて、どこか奥ゆかしいと思うのは私だけだろうか。そして花の散る様は儚さを思う。



河津桜の原木とされる、通称「小峰桜」は推定65年以上だそう。
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http://www.watarigraphic.com/sakura/kawazu02.php


東風解凍(はるかぜこおりをとく)

七十二候の第一候、桜東風が吹く伊豆では河津桜が咲き始める。同時期に春待草の梅も開花する。2月初旬、まだ冬色のうさぎ谷。それでも見晴橋のあたりをほのかに甘く香る白梅が楚々とした美しさを見せている。クラブハウスから、宿泊棟が建つうさぎ谷を眼下に見ながらも、奥深い森の木々を仰ぎ見ることのできる見晴し橋。




1日時間が取れたら、さっと行ける伊豆高原へ。すぐそこまで来ている春を感じながら、温泉に浸かって心身を癒したい。メジロが花の蜜をついばむのが部屋のまどから見える日本の色棟


桜を眺めて湯に浸かれる貸切風呂、鄙の湯





梅のお花見情報
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https://www.ataminews.gr.jp/ume/


長七 春の献立

拍子木が鳴り、楽しみな夕餉。「今朝、庭で蕗の薹が採れました。白和にしてみましたのでご賞味ください」と料理長。早春の代名詞でもある「ふきのとう」がお目見えとは、本当に伊豆高原の春は早い。



先付:穴子と湯葉と赤蕪道明寺の鼈甲餡掛け 山葵



八寸:燻鮭と蕪の椿寿司、伊東突きん棒漁で漁れたなまこの霙酢、“貝合わせ”蛤と地元蕗の薹白和え、伊豆磯漁ブダイとめかぶの煮凝り、国産牛の八幡巻き、丹波黒豆の氷砂糖煮、自家製唐墨大根

ひな祭りを先取りするような「貝合わせ」に盛り付けられた、蛤と蕗の薹の白和え。白和えの甘み、蕗の薹独特の風味、濃厚な蛤の味わい。




御造:伊東産金目鯛、今日の地魚は平目。柚子加減酢でいただく伊東産のやり烏賊

伊豆半島と房総半島の間の海域、相模灘は多くの海洋生物が生息していることから、四季折々の地魚が豊富。



煮物:伊豆沖揚がり“あぶらぼうず”の煮付け、蕗、針生姜、白髭葱、あさつき



中猪口:擦りおろし林檎酢、千社唐




焼物:地物甘鯛の奉書焼き西京味噌仕立て、金柑添え
「立春大吉」鬼が逃げていくという縁起物のお札をあしらった焼物。平穏無事の願いが込もる。



御飯:天城黒豚と牛蒡の炊き込み、木の芽
留椀:契約農家直送雪の下法蓮草の摺り流し、揚粟麩、黒胡椒
香の物:胡瓜の黒文字漬け、青首大根の柚香漬け、潮吹昆布



料理屋菓子:自家製和三盆糖わらび餅



限られた時間の1泊旅。春を先取り豊かな気分で帰途に着く。