冬の風物詩 突きん棒漁で獲れた伊東のナマコ

伊東の海に残る伝統的な漁法に「ナマコの突きん棒漁」がある。晩秋から春先にかけて伊東市の沿岸では、小船に乗った漁師が箱メガネで海底を覗き込みながら3m〜6mもの長いモリ、「突きん棒」でナマコや貝を獲っている。


海が澄んでいて底まで見えなくては獲物を見つけることはできない。また、小舟を浮かせて船上から海底を覗き込むため、小舟が流されるような日は漁に出られない。風がなく、波もない時を選んで船を出すためシーズンに数えるほどしか漁ができないという。海に潜って貝類を獲る漁は夏場のみ解禁。そのほかのシーズンは、潜水漁は禁漁となっているそうで伝統的な「突きん棒漁」が今でも行われている。



今夜の献立が楽しみである。磯自慢搾りたて生源酒と伊東港の魚、地野菜。伊豆高原は本当に豊かなところだ。



先付:雲子の湯葉餡掛け
一年で最も寒いこの時期が旬の雲子。温かい湯葉餡掛けの突き出し



八寸:金目鯛の昆布〆手毬寿司、伊東産突きん棒漁で漁れたなまこのみぞれ和え、地物野生蕗の薹と鮑の白和え、菜の花の芥子和え・黄身そぼろ、燻鮭の砧巻き、干し柿とクリームチーズの博多押し


華やかな朱塗りの梅皿に彩られた八寸。旨み豊かな伊東のなまこを柑橘系の優しいみぞれ和えでいただく。こっくりと濃厚な白和えは対照的。野生の蕗の薹は独特の香りとほろ苦さに春を感じる。



御造:アオリイカ、本鮪、平政
身が厚く、噛み締めるほどに旨みと甘味が増す地アオリイカは絶品。伊東沖の天然鮪。歯ごたえがあり、淡白で上品な平政。



蓋物:合鴨のひき肉入り里芋饅頭
道明寺粉を炒って粉末にし、まぶして揚げた里芋まんじゅうに引いた出汁のあんかけ。いつもながら手が混んでいると思う。一つ一つが独立していながらも調和したお気に入りの一品。



中猪口:自家栽培甘夏と天城山葵のソルベ




焼物:鰆の西京漬の奉書焼き
甘めの味噌でより旨味が乗った鰆。日本酒の肴に最高。



御飯・留椀・香の物:駿河湾産桜海老の炊き込み、無農薬雪の下法蓮草の摺り流し、胡瓜の黒文字漬け、柚香大根、汐昆布 海のルビーと呼ばれる「駿河湾の桜海老」の炊き込み。芳醇な香りと海老の甘味がする贅沢な御飯。



料理屋菓子:林檎の浮島
まるでカステラのような浮島。餡を主にした和の蒸し菓子。


おすすめの地酒、「磯自慢搾りたて生原酒」は水を一切加えず、加熱しないため飲みごたえのある味わいで、搾りたてのフレッシュ感とフルーティさを感じる日本酒だった。



宿泊棟まで敷地内をそぞろ歩き。ちょっぴり冷たい夜風が心地よい。森は高い木々に囲まれていて静かだ。明日は天気も良さそう。桜の小枝で蜜を啄むメジロに会えるかもしれない。