遅咲きの桜も終わり、緑の勢いが眩しい新緑の季節。爽やかなメニューが食欲をそそる。 鯛子寄せ、筍、蛍烏賊、鮑の味噌煮、ふっくら炊けた空豆の艶煮。季節を移ろいを感じさせる一皿。料理人の技とセンスが見て取れる。盛り付けも美しい。
脂が乗ったメヒカリの南蛮漬けは甘酸っぱさがふわふわとした白身によく合う。 太平洋沿岸の深海で生息する魚で美味しい。西伊豆地方では通称「とろぼっち」というそうだ。伊豆の隠れた名産品と言ってもいい。
金目鯛昆布〆棒寿司。昆布の旨みが金目鯛に染み込み、ぐっと身も引き締まり魚の甘みや旨みが凝縮されている棒寿司。くるくると藁を解き頂く。
鰆、平政のお造り
伊東の漁港では体調80㎝以上の大型の鰆が水揚げされるそうだ。春告魚と呼ばれる クセのない淡白な魚で、上品な甘みを感じる美味しい地魚である。
鰤御三家の一つ平政は今がシーズン。透き通るような身は引き締まってさっぱりとした脂が乗っている。独特の風味があって食べ応えあり。平政は数が少なく希少性が高い地魚。
初鰹の藁焼き
生でもなく、たたきとも違う。高温で表面だけを一気に焼くので鰹の旨みが閉じ込められる藁焼き。皮から身にかけて数ミリの火の入り加減で鰹節の、あの香りが立っている。藁焼きの香ばしさがいつまでも余韻として残る逸品。自家製ジュレでまるごと味わう。
煮物は海老の真薯
夏を思わせる温かい一品。ふんわりした饅頭型の真丈を軽く揚げてコクが出ている。出汁の効いたあんかけを絡ませて頂く
静岡牛「葵」のロースト
堂々たるメイン。肉の旨みがしっかりと感じられる。
御飯はブランド鱒の「紅富士鱒」炊き込み御飯。
富士山の冷たい湧水で時間をかけて育った紅鱒は旨みが凝縮されていてプレミアムなのだという。紅鱒の風味がふんわりとご飯に纏い、ご飯の合間から見え隠れする鮮やかな紅色がアクセントにもなり、美味しさを増しているよう。
和風オニオンスープとも言うべき、新玉葱の擦り流し。上品に引かれた出汁にこっくりとした新玉葱の甘みとクリーミーな舌触りが印象的。
美味しいものを頂いた後は、部屋でゆっくりと寛ぐ。テレビもつけず、スマホも電源を切ろう。夏を前にした新緑の季節、ただただ森の中に身を置くように宿で過ごしたい。森に点在する湯殿や食事処を行き来する緑の小径。宿泊棟を覆うような木立。さまざまな緑色が折り重なるように奥深くまで続く森。ただ宿で過ごす旅。そんな旅もおすすめしたい