春蘭、桜葉、うど、こごみ、春の和ハーブをいただく

伊豆高原は春爛漫。河津桜が葉桜になって、大寒桜、おかめ桜、染井吉野と桜の開花リレーが続いていく。富士箱根伊豆国立公園の緑も芽吹きが始まった。日本に自生する有用植物、和ハーブは香りの効能、食する効能があり、季節の移り変わりに添って芽を出し、花開き、実をつける。人の身体も日本の四季に添いながら良くも悪くも移ろいゆくものである。暖かくなり、過ごしやすくなる一方で環境の変化などもあったりする。自然の風景を楽しみつつ、春の和ハーブで自然のパワーをとり込みたい。

3月、弥生のお料理はかろやかな香りと苦味のシンフォニー
春野菜に木の芽酢ジュレがけ。さっぱりとした春らしい酢の物。ジュレの下には季節の山菜。まるで氷が溶けたその下に芽吹く山野草のようなお料理。シャキシャキとした歯応えの独活。独特の香りには疲労回復成分もあるのだそう。



先付:空豆、こごみ、筍、うど


山里に自生するこごみ。くるっとまるまった姿が可愛らしくもある。アクがなく生でも食せる。湯がくと優しい歯ざわりで、少しぬめり感を感じる優しい山野草である。クサソテツの新芽をこごみ「屈」というのは、新芽の姿が前屈みになっているようだから。こごみは免疫力を高め、皮膚や粘膜の細胞を正常にするというから美肌効果も期待できそうだ。


八寸の木盆に旬の食材を盛り込んだ酒肴は春のオールスターズ。見ただけで気持ちが華やいでくる。おかめ桜の小枝で花見酒としよう。



八寸:蕗と蕗の薹の白和え、地物黒鯛の昆布〆小袖寿司、天城産花山葵の三杯酢、静岡産ばい貝の旨煮、蛍烏賊とたらの芽の芥子酢味噌掛け



白和に添えてあるのは春蘭。国内の蘭科の植物では一番早く花をつけて春を告げる、うす緑の清楚な花。さっと湯がいてそのままでも、三杯酢でも。塩漬けにして蘭茶として楽しむこともあるそう。リラックス効果もあるのだとか。


伊東港の魚も、いい魚が揚がっている。春らしい金目鯛の桜葉〆は今だけ。



御造:金目鯛の桜葉〆、山葵酢巻き、ほうぼう、真烏賊




金目鯛の桜葉〆は本当に美味しい。桜葉の塩気と香り、脂の乗った金目、爽やかな山葵酢のゼリーを巻いて。


桜葉独特の甘く爽やかな香りの正体は?
桜の葉に含まれている香り成分は「クマリン」塩漬けにしたり葉を潰したりするとさらに香りが強くなる。血行の流れを良くし、むくみや冷えの改善に良いとされている。抗菌効果、老化防止にも役立つそうで、春を楽しみながら取り入れたい。



蓋物:穴子の飛竜頭、豌豆の擦り流し、蓬麩、春子椎茸、揚げ牛蒡


色鮮やかな豌豆の吸い地に、味わい深い穴子の飛竜頭。香ばしい蓬麩と揚げ牛蒡のサクサク感が絶妙。 豌豆は走り。旬でしか味わえない瑞々しい甘さ。ミネラルやビタミンたっぷり。もちろん豆なのでタンパク質も豊富だ。


中猪口:八重桜と天城山葵のソルベ
甘く爽やかな八重桜葉の香りとピリッと締まる天城山山葵が油を流してくれる。


メインは静岡牛「葵」の和製ロースト。行者にんにくの香りでいただく。



焼物:静岡牛「葵」百合根と菜花ペースト、行者にんにくオイル掛け、焼き筍、揚げ行者にんにく
百合根は栄養価が高く、滋養強壮などの薬理効果がある植物として親しまれてきた。独特のほろ苦さを持つ春野菜、菜花と合わせたペーストが春らしい。


花吹雪名物の桜おこわ。私もファンのひとりで、寒桜が咲き始める頃からまだかまだかと待っている。



御飯:桜おこわ、エビ、三ッ葉、干し貝柱入り
留椀:清汁仕立て、焼湯葉、地物ふのり
香の物:胡瓜の黒文字漬け、芽キャベツの粕漬け、汐吹昆布



伊豆特産の大島桜の葉が上下に敷かれ、蒸しあげた逸品。桜葉の香りが炊きおこわに移り、ほんのり上品な味わいに仕上がっている。



料理屋菓子:自家製 和三盆糖わらび餅


和ハーブは香りを楽しむだけでなく、料理の薬味や食感、見た目の美しさで季節を彩り、有用植物としても薬効を見込める。


花吹雪の宿泊棟が点在する森も春の訪れ。小鳥やリスたちが忙しく枝から枝へ飛び移っていく。まもなく森の動物たちの恋の季節がやってくる。